出島の東側、整備された庭園の隣には連日来場者で賑わう一角があります。その名は「ミニ出島」。本物の約15分の1サイズの出島の模型が設置された、人気のフォトスポットです。
ミニ出島が設置されたのは昭和51年(1976)のこと。当時の出島では、建物の復元整備はまだ始まっておらず、中央道路を車が走り、場内には店舗や住宅が建ち並んでいました。海に浮かぶ扇形の出島を想像させるものは何もありません。そのため、往時の出島の姿を訪れる人々に分かりやすく伝えるためにこの模型が作られました。
作成の際に参考にされたのは、「長崎出島之図」(長崎大学附属図書館経済学部分館蔵)。出島の出入り絵師であった川原慶賀が描いたとされるこの図をもとに、1820年代に出島内に建っていた48棟の建物の模型が作られました。
ミニ出島が設置されてから今年で46年。年中雨風に晒されるミニ出島を、約半世紀も変わらない姿で見学することができているのは定期的な修繕のおかげです。平成12年(2000)に改修工事が行われた後、平成24年(2016)からは長崎県立長崎工業高等学校建築課の3年生が毎年修繕を行っています。令和4年(2022)の1月に、48棟全ての建物の修繕が完了し、12月には地面部分や外構の修繕が行われました。
一方で、現在出島には16棟の建物が復元され、往時の景観の整備が進み、ミニ出島は役割を果たし終えたとも考えられています。出島の復元整備事業は本来あった場所に、本来あったものを復元することが基本です。今後、東側の整備を進めていく中で、ミニ出島をどうするかも課題になっています。
(長崎市 出島復元整備室 学芸員 和田奈緒)