今回のコラムでは、出島町人の仕事にスポットを当ててお届けします。
これまで、出島町人の役割として、「出島の土地・建物の所有者として、オランダ商館員に土地・建物を貸すこと」、「所有する建物の管理・修繕を請け負うこと」、「貿易時に荷守をするなど、監視などの業務に従事すること」など、いくつかの例をご紹介してきました。出島町人についての記録は少なく、なかなか実態がつかみにくいところではありますが、彼らの出島での仕事ぶりについては、オランダ側が作成した資料からいくつか記述を見つけることができます。
出島では、貿易で忙しい夏の時期が終わり、冬になると建物の修理に関する動きが増えてきます。歴代オランダ商館長が公務日誌として記録したオランダ商館日記には、出島内の倉庫や住居の現地確認に訪れたり、修理や見積もりをするために、大工を引き連れて出島に訪れたりする様子など、建物の所有者としての出島町人の姿も記されています。商館長ヘンドリック・ドゥーフが記した、出島内建物の用途に関する説明書からは、出島町人が夜間の警備のため、出島内に駐在したことも分かっています。
また、出島町人の中には、出島町の代表者である「出島乙名」を務めるものもいました。出島乙名の仕事は多岐にわたり、オランダとの貿易の事務、出島への人の出入りの管理、出島内公共施設の管理や建物工事の世話など、出島町に関わる管理・監督を行いました。
出島町人は、出島に居住していたわけではありませんが、必要に応じて出島に滞在し、所有者として、また、一部は町の代表者として、出島の管理を行いました。
(長崎市 出島復元整備室 学芸員 和田奈緒)