出島を訪れると、江戸時代の復元建物16棟が建ち並び、中央の通り沿いに甦った往時の景観を見ることができます。長崎市がこれまでに行ってきた建造物を復元する史跡の整備事業は、それぞれ第Ⅰ期(2000年完成)、Ⅱ期(2006年完成)、Ⅲ期(2016年完成)に区分され、次に行う計画は、第Ⅳ期事業と呼ばれています。
長崎市は、このⅣ期事業に、令和5年度から本格的に着手しました。整備を行う場所は、出島の中央部の南側、現在の筆者蘭人部屋や、乙名詰所、組頭部屋・銅蔵の後ろ側にあたります。事業の内容は、往時そこにあった出島町人部屋を復元することと、十五番蔵・番所の表示、顕在化になります。また外構整備を行い、これまでに整備が完了している復元ゾーンとつなぎあわせて整えることによって、出島全体が往時の景観により近づくことを目指しています。完成しましたら、出島の中には二つの通りができ、より厚みのある空間を来場者は散策することができます。
Ⅳ期事業では、復元を行う建物が出島町人部屋1棟であるため、この建物が今回の事業の主役となります。このコラムでも、これから数回にわたり、出島町人または出島町人部屋について、少しずつご紹介いたします。コラムを通じて、Ⅳ期事業の概要をお知らせするとともに、事業の完成が楽しみになりますよう、まとめていきたいと考えています。
オランダ商館長や商館員たちの暮らしと貿易の場であった出島ですが、出島町人の視点で見てみると、また違った出島像が見えてくることでしょう。
(長崎市 出島復元整備室 学芸員 山口美由紀)