令和4年(2022年)は、史跡に指定されてから100年目の節目の年にあたります。これを記念し、改めて『出島の価値を考える』という取組みを本コラムにて行います。
第1回目は“唯一無二の遺跡”。出島は日本に所在する遺跡の中でも、その歴史的背景や築造の経緯など、とりわけ異質な遺跡と言えます。そこで、何が唯一無二なのか、考えてみたいと思います。
オランダ商館跡として、国内に唯一無二?いいえ、出島に先んじて、平戸にオランダ商館が置かれていました。
江戸時代、海外と貿易を行った拠点施設として唯一無二?いいえ、長崎には、中国貿易の拠点となった唐人屋敷や新地荷蔵があります。このほか蝦夷地(アイヌ)と交易を行った松前や、琉球からの交易窓口であった薩摩、国交を結んでいた朝鮮との窓口であった対馬が挙げられます。
海中を埋め立てた人工島として唯一無二?いいえ、古くは平清盛が築造を始めた経が島、幕末には品川台場があります。新地荷蔵も同じように海中を埋め立てて作った人工島です。
西洋文化が華開いた場所として唯一無二?いいえ、出島以前にはキリスト教の受容や南蛮貿易によって栄えた鹿児島、大分、堺や長崎の平戸、横瀬浦、口之津などがありました。
西洋の学術の拠点として唯一無二?いいえ、シーボルトの鳴滝塾や、蘭学をひろめた大坂の適塾(緒方洪庵)、江戸の芝蘭堂(大槻玄沢)など、蘭学や蘭医学の私塾がありました。
こうやって挙げてみると、出島というのは、なんと特徴の多いことでしょう。また、出島以前や出島と同じ時代に、関連する施設や場所も多いことがわかります。このあたりに、価値をひも解くヒントがありそうです。次回以降、この出島の特徴を、価値の観点から見ていきましょう。
(長崎市 出島復元整備室 学芸員 山口美由紀)