今回は第2弾、中止になってしまった企画展解説の代わりに、展示されている『うつわ』についてご紹介させていただきます。
浮世絵は、江戸時代から明治時代中期に盛んに制作され、役者絵、美人画、名所絵、武者絵など多様な題材がみられます。手描きによる肉筆画、
木版多色摺の錦絵が一般的で、長崎版画も広い意味では浮世絵の中に分類されています。
江戸時代の美人画は絵師の特徴を盛りこみながらも、写実という点では迫真性に欠け、類型化した表現であったと言えるでしょう。
近代にはいり、時代が進むにつれ、美人の概念も変化し、日本画の伝統に清新な表現を加えた美人画が登場します。やがて明治時代後期にはいると、石版画や写真の
普及で、伝統的な浮世絵は衰退していきました。
浮世絵に描かれた日本女性は、上級階層や市井の婦人、娘たちなど、様々な女性が対象となりましたが、中でも多かったのは、当時の男性たちのあこがれであった
花魁、芸者などの艶やかな女性たちを描いたものでした。メディアとして美しい絵姿を伝える浮世絵は、ブロマイドの一種であり、海外に運ばれた浮世絵の花魁や芸者の姿は意匠化されて固定し、日本女性のステレオタイプとなっていきます。
こうした状況を反映して、幕末から明治時代に日本国内で生産された輸出向けの磁器も、これまでの中国と日本を一括りとした東洋的デザインではなく、日本の風俗をモチーフとしたものへと切り替わり、ジャポニスムによる海外需要を受けて、着飾った和装の女性たちや時には武者を、うつわに描きました。
これらのモチーフは、欧米において日本を象徴するアイコンとして認識され、幕末から明治前期に有田で製作された肥前磁器が、長崎を通じて輸出されました。西洋食器の器形に日本風のデザインを施した華麗な磁器は、海外で人気を博し、また、西洋でも、これらを模した「日本」をテーマとするデザインの工芸品が製作され、
日本趣味の流行を拡散させていく役割を担いました。
出島企画展『ジャパニーズビューティ うつわに描かれた女性たち』会期は、令和3年2月23日まで。
長崎市 出島復元整備室